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8   目的なしに乗りたい

6月29日(月) 00:00

◇20年前、東京で電車通勤していたころの話です。電車を三つ乗り換えて、都心まではおよそ1時間でした。通勤時間が1時間というのは、恵まれていた方でしょう。それでも、かの大都会のラッシュのこと、慣れるまでには何度も面食らい、疲れました。

◇自分が乗る駅での初日のこと、ギュウギュウ詰めの電車が到着しても、誰一人として降りてこないのです。何とか体を押し込みましたが、「乗れないのか」と慌てました。後で先輩から、体を後ろ向きにドアの内部の上に両手を入れ、腰をグイッと押し込むのがコツだと教わりました。

◇ドア付近でぼんやりしていると、降りる人の流れに押されて違う駅のホームに何度押し出されたことか。階段の上り下りは、都会人は早足です。ラッシュ時はエスカレーターでも歩くのが普通、それ以外でも歩く人のために片側を開けておくのが常識だそうです。

◇電車内では新聞はおろか、文庫本さえ読めるスペースがありませんでした。苦行のような通勤生活、何十年も続けざるを得ない人が多いと思うと、3年で終止符を打てたことに感謝したい気持ちになります。地方で生活する、それだけで「得」なことはいっぱいあります。

◇KCTで6月中旬から放送している特別番組「走れ!リンテツ~水島臨海鉄道キハ20に乗って~」を見ると、なぜか通勤生活時代を思い出します。リンテツに初めて乗車した時、「この列車には、また目的なしで乗りたい」と思ったものでした。何事もスピードが求められる時代にあって、この「ゆっくり進む」リンテツのリズムは愛おしくさえあります。