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42     「ゲルニカ」から「明日の神話」へ

6月30日(水) 00:00

◆先日、所用で上京した際、渋谷へ寄り道をして、岡本太郎「明日の神話」を見てきた。JR駅から井の頭線改札を結ぶ2階の連絡通路にそれはあった。原爆炸裂の瞬間を描いたという、横30m、縦5.5mの巨大壁画である。設置されてからおよそ2年。立ち止まって見る人など誰もいない。

◆当然だろう。壁画の前を一日30万人が通るそうだが、大半が通勤・通学客だ。壁画は、完全に渋谷の風景の中に溶け込んでいるのだろう。とはいえ、初めて目にする者には、鮮烈な赤を浴びせかけられるような迫力があった。混雑する駅通路の日常を切り裂くかのようでもある。美術館の奥に鎮座している必要はない、というメッセージさえ聞こえてくるようだ。

◆「明日の神話」をしばらく見ていると、同じような衝撃を受けた作品がよみがえってきた。2年前見たピカソの「ゲルニカ」である。残念ながら本物ではないのだが、初めて横7.8m、縦3.5mの原寸大で見ることができたのだった。鳴門市にある大塚国際美術館でのことである。ここには世界中の名画を陶器の板に原寸で焼き付けた作品が展示されている。

◆いわばオールコピーの美術館なのだが、正直、圧倒された。これまで美術館や展覧会で本物と対面できたのは、ほんのわずか。学校の教科書や美術全集で見てきたのはすべてコピーであり、縮小されたものであり、部分だったのだ。この先、スペインで「ゲルニカ」の実物を見ることができるだろうか、との思いもあったのかもしれない。

◆とにかく原寸大の「ゲルニカ」を“見た”という充実感はあった。ピカソと岡本太郎。黒・白・灰の色調と赤が印象深い色彩。20世紀の二人の天才芸術家が、20世紀の人類の愚行にどう向き合ってきたのか。感動という言葉では語れない、重いものが残っている。