6月22日(火) 00:00
◆入梅して間もなくのKCTワイド。オープニングのトークで、アナウンサーが「暑さになじみ始めていた体が、突然の梅雨寒で体調を崩しやすい季節です」と注意を呼びかけた。と、いうのにである。その夜は、蒸し暑く、つい窓を開けたまま寝てしまった。案の定、朝方は結構涼しかったようだ。当然のように夏風邪は見逃してくれなかった。
◆少し咳が出て、クーラーの効いた部屋に入るとゾクゾクしてくる。病院に行くほどのこともないが、夏風邪はなかなか抜けてくれない。屋外で汗をかいたまま、クーラーの室内(テレビ局の私がいる副調整室は、機器類のため寒いぐらい冷えている)に駆け込むという、この繰り返しが長引かせるのだろう。暑さが加わると、食欲も落ち気味になってくる。
◆夏風邪と食事といえば、二人の時代小説の達人に忘れがたい作品がある。まずは藤沢周平「三屋清左衛門残日録」の「草いきれ」の章。清左衛門はひどい夏風邪をひき、隠居部屋で床についてしまう。妻に先立たれ、息子の嫁が食事の世話をしている。食欲が衰えたとみると、「一箸でも多く喰わせよう」と、献立に心を砕く。「蕪の酢の物、小茄子の浅漬け、金頭の味噌汁、梅干を添えた白粥」
◆もう一人、池波正太郎「鬼平犯科帳」シリーズの「埋蔵金千両」。ここでは、自称、備前・岡山の浪人が夏風邪をこじらせたことが物語の発端になっている。この浪人、食べ物には贅沢で、同居の女に自分で指図して魚や野菜を料理させている。体がいよいよ弱った時には、「卵を落とした熱い粥」などとある。何気ない献立の中にも、こだわりが感じられるのは池波作品ならではだ。
◆二人の作家の食べ物の描写は巧みで、季節感と色彩豊かな、決して豪華ではないが、文字通り垂涎の料理が登場してくる。二人の文章を読み返すだけで、食欲がわき、夏風邪のことも忘れてしまう。