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23   長考するのは、どんな時?

11月23日(月) 00:00

◆新世代対決と話題を呼んだ「第17期大山名人杯倉敷藤花戦」の第2局は、里見香奈倉敷藤花が中村真梨花女流二段を破って初防衛に成功した。テレビから流れる有吉道夫九段と鈴木環那女流初段の掛け合い大盤解説も、楽しく、面白かった。といっても盤上の両者は、ともに2時間の持ち時間を使い切っての熱戦だった。

◆持ち時間というと、大山康晴十五世名人の忘れられない言葉を思い出す。1990年5月に前人未到の通算1,400勝を達成した後のことだったと思う。かねてから気になっていたことを聞いてみた。「名人が長考に入られる時は、やはり分が悪い時ですか?」。名人からは即座に答えが返ってきた。しかも予想もしなかった答えで、今でも強く印象に残っている。

◆「うまく行き過ぎている時ですよ」。物事はそんなにうまくいくはずがない。それを調子に乗ってドンドン押していくと、とんでもないことになってしまう。そんな説明をしてくださったと覚えている。"受けの大山"といわれた時期があった名人は、色紙にはよく「忍」と書いていた。分が悪くなった時、耐え忍んで長考を続けるのかと思っていただけに、この答えは意外だった。

◆以来、名人の「長考論」は、物事を考える時の一つの尺度のように思い返している。例えば、財テク、不動産投機などの言葉が踊ったバブル経済の時代とその後の失われた10年。まさに日本経済はイケイケドンドンと、長考を怠ったツケに長く苦しんだのではなかったか。言うまでもなく政治こそ目先の一手、二手ではなく、的確に何手先までも読む姿勢が求められよう。今は長考の時なのか、それともすぐに次の一手を打つ時なのかを、含めて。

◆タイトルを防衛した里見倉敷藤花は、攻めに定評がある。最近は、大山名人の棋譜を丹念に調べているそうだ。「もう少し落ち着いた手も指せるようになりたい」と。まだ17歳。ますます強くなりそうな予感をさせるコメントだった。