10月19日(月) 00:00
◆1921年、大正10年の生まれというから、今年で満88歳になる。その品の良い、凛とした話しぶりに魅了された。沖縄・芭蕉布の人間国宝、平良敏子さんである。何より「人を想う」気持ちがしみるように響いてきて、自社番組であることも忘れ、何度か涙がにじんできた。
◆KCTワイドで年間企画として取り組んでいる「大原總一郎生誕100年記念シリーズ」の第2部が、10月から始まった。スタートの3週にわたって登場していただいたのが、平良さんだった。大原總一郎評伝や芭蕉布の解説書で多少の知識はあったものの、平良さん自身の言葉で聞く「倉敷と沖縄のかかわり」が情の通った物語として浮かび上がってきた。
◆平良さんたち沖縄女子勤労挺身隊が、倉敷に来たのは1944年のこと。六十数年の時が流れたというのに、平良さんの思い出は全く色あせていないようだった。それだけ大原社長が従業員のためを思い、遠く沖縄から来た女性たちのことに心を砕いたのだろう。戦後、会社自体の再建が大変な時に「酒津に沖縄娘村をつくりたい。倉敷に沖縄の文化を残したい…」と提案した大原社長の姿が、平良さんの中には今も生き続けているのだろう。
◆「沖縄に帰っても沖縄の織物を守ってほしいなあ」。倉敷で外村吉之介氏らから2年間、織りを学んだ平良さんたちが、倉敷を去る日に大原社長が、そうつぶやいたそうだ。「普通ならこれだけ勉強させたんだから、やらなくちゃあいかんと強制するはず」。ところが、大原社長が優しくつぶやいたことが、平良さんと芭蕉布の将来を決定付けた、というエピソードも興味深かった。
◆芭蕉布は、戦前は沖縄各地で織られていたという。壊滅状態だった芭蕉布を平良さんらは復興させ、昭和48年には「喜如嘉の芭蕉布」は国指定重要無形文化財となる。「偽りのない仕事をして、ご恩返しにかえさせていただきます」。平良さんの「凄さ」を通して大原さんの「大きさ」が見えるようだった。11月3日の大原企画・特別編成の中で、再放送する予定になっている。