6月9日(火) 18:44
◇6月9日、中国地方が梅雨入りしました。暦の上ではとっくに夏になっているとはいえ、実感としては春でも夏でもないシーズンに入ったようです。暑さになじみ始めていた体が、思いがけない梅雨寒(つゆざむ)に、身をすくめることがあるのもこの季節です。
◇「日本は四季というより、梅雨を加えて五季がある」といったのは、日本文学研究者のドナルド・キーンさんでした。じめじめと、うっとうしい日々が続く梅雨ですが、雨は稲を生長させ、草木の若葉をいっそうたくましく育てていきます。雨は、命のはぐくみを感じさせてくれます。
◇詩人の高橋順子著「雨の名前」を読むと、私達はなんとたくさんの、表情豊かな名前の雨とともに生きているのかと感心します。中国から梅雨(ばいう)として伝わった6月から7月にかけての長雨の季節にも、「走り梅雨」「迎え梅雨」「青梅雨」「送り梅雨」「男梅雨」「女梅雨」「返り梅雨」など多彩です。雨の「顔」まで、細やかに見えてくるようです。
◇梅雨がないといわれる北海道にも、たまに「蝦夷梅雨」という現象もあるそうです。あってほしくない「暴れ梅雨」「荒梅雨」「空梅雨」というのもあります。梅雨にはまた、陰暦の5月ごろに降る長雨から「五月雨(さみだれ)」という美しい名前もあります。梅雨は時候のことを含めて言いますが、五月雨は雨そのものを言うようです。
◇小説家で詩人の佐藤春夫に「さみだれ」という詩があります。その一節で「きのふ、けふ、よし味気なくとも待てば晴るるさみだれに、あすの初夏の光をねがへ」と詠んでいます。