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TOP > デスクコラム > 2   旅情ミステリー(2009/04/29)

2   旅情ミステリー

4月29日(水) 00:00

◇西村京太郎の近刊「吉備 古代の呪い」を読みました。総社市に住むアマチュア郷土史家が発表した小説が、殺人事件に発展するというのが大筋です。ミソは、その小説というのが、おなじみの「温羅伝説」「稚媛伝説」を大胆に解釈したところでしょうか。

◇ミステリー作家に言わせると「白壁の町・倉敷や吉備路は、ミステリーの舞台にふさわしい」ようです。確かに倉敷は旅情ミステリーとか、トラベルミステリーと呼ばれるジャンルで、よく登場しています。小説上の事件の舞台とはいえ、地元に住む者には「なんでおどろおどろしい事件ばかり」と、少々ゆううつです。古里がどのように描かれているのか気になります。何しろ地元にとっては「旅情」というより、「ご当地ミステリー」になるのですから。

◇内田康夫「倉敷殺人事件」、木谷恭介「倉敷美術館殺人事件」、和久峻三「倉敷殺人案内」、西村京太郎「尾道・倉敷殺人ルート」「倉敷から来た女」、山村美紗「山陽路殺人事件」、梓林太郎「倉敷・宮島殺人回廊」など、名立たる作家たちが倉敷を描いてきました。つい乗せられるというんでしょうか、私も志茂田景樹「雨の倉敷殺人紀行」などは、本を手に“事件現場”を歩いたことがありました。

◇ミステリーファンから聞いたところでは「倉敷は京都の次ぐらいに取り上げられる」そうです。つまり観光地としての人気度に比例している面があるようです。表面的な美しさだけでなく、歴史ロマンや謎を含んだたたずまいが、この土地の魅力を膨らませて、作家たちをくすぐっているのでしょうか。旅情ミステリーが、多面的に観光PRに貢献していることだけは間違いないようです。

◇「吉備 古代の呪い」は、岡山を描く久しぶりのご当地ミステリーでした。総社や倉敷が直接の事件現場になっているわけではありませんが、おなじみの地名や歴史上の人物が次々出てきます。このゴールデンウイーク、全国のファンをどこまで引き付けるか、楽しみです。