デスクコラム

TOP > デスクコラム > 34   テレビで未来に残したいもの    (2010/03/31)

34   テレビで未来に残したいもの    

3月31日(水) 00:00

◆北東北との交流をうたった今年の「倉敷音楽祭」。秋田民謡、津軽三味線、盛岡さんさ踊り、秋田のわらび座による歌舞と音楽パフォーマンスなど、3日間存分に楽しませてもらった。音楽祭のためだけにやって来た、九州の唐津市で市議をしている知人が「倉敷は凄い。文化振興財団の企画力には感動した」との言葉を残してくれた。一市民としてもうれしいことだった。

◆今回の音楽祭の中で異色だったのが、芸文館ホールロビーでの「遠野の昔話~心のふるさと~」だった。岩手県の遠野地方に伝わる昔話を、語り手の正部家(しょうぶけ)ミヤさん(87)と姪が語るものだ。「むがす、あったずもな」で始まる、遠野の昔話の数々。岩手弁というのだろうか、分からない言葉も多かったが、物語の情景は生き生きと浮かび上がってくるようだった。淡々としゃべっているようでいて、独特のリズムを刻む語りは心地好く、柔らかく耳に入ってきた。音楽祭に「遠野の語り」を入れた主催者の意図も伝わってくる。

◆正部家さんは小さいころ、父親から毎晩のように囲炉裏端で語ってもらっていたそうだ。その父親も子どものころは、学校で先生たちから昔話を教わっていたという。人から人へ伝えられ、温かい記憶とともに、正部家さんの体に遠野の昔話はしみこんでいるのだろう。

◆暮らしの中で語り伝えられ、ふるさとに根付いた昔話や民話、伝説…。囲炉裏端がなくなり、核家族化が進み、子どもがテレビやゲームに夢中になる中にあって、正部家さんのような「伝承の語り手」が減っている。だが、口承文芸を残そうという動きも、各地で広がっているのも事実だ。聞き取り調査や本で覚えた語りをする「現代の語り手」たちである。

◆KCTでは4月6日からの毎週火曜日、総社市在住の岡山民俗学会名誉理事長であり、岡山県語りのネットワーク会長の立石憲利さんによる新番組「立石おじさん おかやまの昔話」(1回15分)が始まる。岡山県でも昔話や民話、伝説などが、たくさん伝えられてきた。その伝承を絶やすまいと半世紀以上も各地で聞き取りし、採録を続けている立石さんは、語り手としても広く知られている。口承文芸の衰退が「テレビの普及によって」と言われるのなら、では、そうした「ふるさの文化」を未来へ残していくために、今こそテレビが役立ちたい。新番組には、そんな思いもある。