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9   1909年生まれの人たち

7月3日(金) 00:00

◇松本清張ブームが繰り返される度に「ミステリーファンでなくても、清張は読まれる」と言われてきました。私もその一人だったようです。もちろん推理小説は面白いのですが、社会派の凄みが出た「日本の黒い霧」「昭和史発掘」などノンフィクションにも圧倒された覚えがあります。まさに昭和を代表する作家でした。

◇昭和といえば、太宰治も欠かすことは出来ません。何度読み返しても、引き込まれるものがあります。さらに昭和も戦後ということになると、評論家の丸谷才一氏が「戦後最高の作家は、やはり大岡昇平なのではないか」と語っていたのを思い出します。「俘虜記」「レイテ戦記」「天誅組」、それに何といっても「野火」は忘れられません。

◇50年にわたって未完の大長編「死霊」を書き綴った埴谷雄高もいます。存在や宇宙を語る形而上小説といわれています。数年前にやっと読み終えましたが、難解で、正直混乱しました。「幻視のなかの政治」「不合理ゆえに吾信ず」などの思想・評論集は、団塊の世代の学生時代は必読書のようでもありました。

◇以上、活躍の時期も、場所も、視点も、作風も全く異なる4人の作家には実は共通点があります。1909年生まれ、つまり今年が生誕100年になるのです。夭折した「山月記」「李陵」などの中島敦も同じ年の生まれです。作家以外でも、岡山県生まれの秋田書店の創立者・秋田貞夫、映画評論の淀川長治、漫画家・横山隆一、作曲家・古関裕而、写真家・土門拳など、実に多彩な顔ぶれです。

◇KCTワイドでは毎週水曜日に「大原總一郎生誕100年記念企画」をお送りしています。その大原・元倉敷レイヨン(現クラレ)社長の7月は誕生月であり、29日が満100歳の誕生日です。1909年生まれの人たちが、共通した時代の空気と流れの中で、どのように生き、考えていたのか。大原總一郎像を浮き彫りにする上でも、振り返ってみたいと思います。