TOP > 立石おじさん おかやまの昔話 > 【第1話】 ヒバリ金貸し
昔、あるところに金貸しがおったんじゃなあ。金貸しいうのは、みんなに金を貸して、利息をとって、そうして左うちわで暮らしとったんじゃ。ある日のこと、おてんとうさん(太陽が)金を借りにきたんじゃ。金貸しはなあ、おてんとうさんを見て、かっぷくはええし、顔色もええし、これじゃったら、なんぼ金を貸しても、すぐに働いて返してくれるじゃろうおもうて、ようけいこと金を貸したんじゃ。「期限は一か月ぞ!」「ええ、わかっとります。一か月後には必ずお払いしますから」おてんとうさんは、金を借りて帰ったんじゃなあ。一か月経っても、おてんとうさんが金を払いに来ん。金貸しは、おてんとうさんのところに、「期限が来たぞ。お金を払ろうてもらいに来たんじゃ」「いや~すいません。できる予定の金ができなんだんです。もうしばらく、待っていただけませんか。」「そうか、困るなあ、じゃあな、もう一か月待っちゃろ。今度はちゃんとできるな」「へぇ~、今度は、確かに金の入るめどがありますんで、必ず払いますけん」「じゃあな、もう一か月だけ待っちゃるからな」おてんとうさんはな、一か月待ってもろうたんじゃなあ。一か月経って、おてんとうさんが、金を払いに来るかと思ったら、金を払いに来ん。金貸しは、またおてんとうさんのとこへ行ったんじゃ。「おてんとうさん、期限が来たでなあ、ちゃんと金を払ろうてもらわんと困るなあ」「いや~、すみません。出来る予定の金ができなんだです。払ろうてくれることに約束しとんたんが、払ろうてくれんのです。もうちょっと待ってください」「今度は、本当にできるんか」「今度は、必ず出来ますんで、もうちょっと待ってください」「じゃあほんなら、もう一か月だけ待っちゃろう。今度は確かに、払うてもらわんと困るぞ」「今度は、入るあてが、ちゃんとありますから、必ず払いますから」「じゃあ ほんなら一か月だけ待っちゃるからな」一か月のばしてもろうたんじゃあ。それから一か月が来た。ところが、おてんとうさんは、一向に金を払いに来ん。金貸しは、催促に行ったんじゃなあ。「おてんとうさん、金を払ろうてもらわにゃ困るがなあ。ちゃんと、期限が来たでなあ」「いや~すいません。入る予定のお金が入らんことになって、もうちょっと待ってもらえませんか」「何をいうか。何回目じゃと思うんでーあんた、ちゃんと、払ろうてもらわんとこっちも困るぞ」「いや~そう言わすに、もう一か月だけ」「待てん。あんたが払わん気なら、こっちもその気になるぞ」金貸しは、大きな声をしたんじゃなあ。おてんとうさんは、きょうとうなって、ここにおったら、金貸しに命までとられるんじゃないか思うて、「そうじゃ、いまのうちに、逃んといけん」と思うて、それから、空の上に逃げて行ったんじゃ。空におてんとうさんが逃げた。金貸しは、追いかけて行きたいけど空の上に追いかけて行くわけにはいかん。空を眺めては、「惜しいことをした。ようけい貸したのに、全部踏み倒された。惜しいことをした。ようけい貸したのに、全部踏み倒された。」金貸しは、毎日毎日、悔んどたんじゃなあ。そのうちに、金貸しは、悔やみ死んでしもうたんじゃ。死んで生まれ変わって、小さなヒバリの鳥になったんじゃなあ。ヒバリの鳥は、小さくっても空を飛ぶことができる。そうじゃ、空が飛べるから、あのおてんとうさんとこに、前に貸した金を返してもらわにゃいけん。ヒバリになっても金貸しの性根は、ちゃんと生きとったんじゃ。冬のあいだ南の方におてんとうさんがあるもんじゃから催促に行くわけにはいかん。3月になり4月になるとおてんとうさんがだんだん頭の上に昇ってきた。よし、今じゃと思うて、ヒバリは、おてんとうさんのところへ金を返してくれいうて催促に行くんじゃ。利子をくれ、元金をくれ、りゅうくれ、もとくれ言うていくんじゃなあ。「リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ・・・・・・・・・・・」今度は、おてんとうさんは空の上で大きな顔をして小さなヒバリなんかなんでもないもんじゃから「何で返せるか」と睨みかえす。そうすると、ヒバリは、きょうとうなって、「リリリリ・・・・利子だけでもいい、利子だけでもいい、リリリリ・・」と降りてくるんじゃ。
降りてきても、やっぱり利子だけじゃいけん。元金も利子も返してもらわんといけん思うて、思い直して、また、おてんとうさんとこに催促に行くじゃなあ。「リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ・・・・・・・・・・・」また、おてんとうさんに睨まれて「リリリリ・・・利子だけでもいい、利子だけでもいい、リリリリ・・・」とおりてくるんじゃ。やっぱり利子だけじゃいけん、元金ももらわんといけんと思って、また思い直して、ヒバリはなあ、「リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ・・・・・・・・・・・」またおてんとうさんに睨まれて「リリリリ・・・利子だけでもいい、利子だけでもいい、リリリリ・・・」と降りてくる。春の長い一日を朝から夕方までヒバリは、おてんとうさんのところに
「リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、 リュウくれ、モトくれ・・・・・・・・・・・」と催促に行っては、「リリリリ・・・利子だけでもいい、利子だけでもいい、リリリリ・・・」と春の長い一日朝から夕方までヒバリはおてんとうさんのところに金の催促にいくんじゃ。「リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ、リュウくれ、モトくれ・・・・・・・・・・・」「リリリ・・・利子だけでもいい、利子だけでもいい、リリリリ・・・」一日上がったり、降りたりしとるんじゃって、昔こっぷり。
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最終更新日: | 2012年6月23日(土) 14:43 | ![]() |
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