TOP > 立石おじさん おかやまの昔話 > 【第10話】 大食い女房
昔、あるところに、夫婦がおったんじゃなあ。男と女房が、仲よう暮らしとった。男は、毎日、山に行って木をこったり、草を刈ったりして帰ってくる。女房の方は、家で料理を作ったり、掃除をしたり、洗濯をしたり、それから、家の周りの畑を作ったりして、二人で暮らしておったんじゃなあ。
ある日、男が山から帰ってくると、夕方なのに、灯がついてない。「おかしいな。どっかに出かけたんじゃろかなあ」と思って、「帰ったぞ」言って家の中に入ったら、囲炉裏のそばで、女房が寝とる。「あ~胸が苦しい。あ~お腹が張る。体じゅうがだるい。あ~えらい、えらい」言うて寝とる。
それを見た男は、「どうしたんなら」「いや~、体じゅうがえらいんじゃ。えらいんじゃ」「そうか」額に手を当ててみても、熱はないような。「よし、納戸にふとんを敷いちゃるから、入って寝え」そうしてふとんを敷いちゃって、納戸に寝かしたんじゃなあ。それから男は、ひとりで、ごはんを作って食べた。次の朝起きてみると、台所で女房が仕事をしとる。「おい、だいじょうぶなんか」「ええ、もうすかり良うなりました」朝ごはんをいつものようにたくさん食べる。それから、またしばらくして、夕方になって男が山から帰って来ると、また灯がついていない。中に入ると、囲炉裏のそばで、女房が寝とる。「あ~お腹が痛い。胸がつかえる。あ~お腹がえらい」
こないだとおんなじように寝とる。熱はない。「こりゃあ、困ったなあ。ふとん敷いちゃるから早よう寝え」また、寝さした。次の朝には、いつもと変わらんように、料理を作って、そうして、朝ごはんを食べる。そういうことがたびたびおこるもんじゃから、男は、「どうもおかしいぞ」と思うたんじゃなあ。ある日、男はな「山へ行って、きょうはちょっと遅うなるからなあ」言うて出かけていったんじゃなあ。そうして、出て行って、すぐにとって帰して、外からながめとった。そうしたら、女房が便所に行ったもんじゃから、その隙に、家の中に入って天井裏に隠れて下を見とった。そうしたら、台所を片付けて、掃除をして、洗濯をすましたかと思うたら、米びつからお米を三升出して、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、洗い出す。「おや、米を三升も洗ろうとる。誰かお客さんでも来るんかなあ」米が洗い終わったら、裏の畑に出てかけて行って、サトイモだとかゴボウを引き抜いて来て、きれいに洗って、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ削る。「何を作るんかなあ」と思うて見とる。準備が出来たかと思うたら、今度は、表の戸から外に出かけて行った。「どこに行くんかなあ」と思っておったら、しばらくしたら、大きな鯛を両手に二匹さげて帰って来る。「ありゃ、あの大きな鯛を二匹も何にするんじゃろうかなあ」見ておったら、さっきのお米と野菜と一緒にして炊き込みごはんを作り出した。そうして、鯛を焼きだした。ごはんが煮えて、鯛が焼き上がると、あぐらをかいて、大きな茶碗にごはんをついで、ガーブー、ガブ、カブ食べる。そうして、魚を取って食べる。ごはんを食べる。鯛を食べる。あっという間に、三升の飯と大きな鯛二匹をたいらげてしもうて。「あ~、お腹いっぱいになって、あ~気分が良うなったあ」ここで、一休みしたいんじゃけど、まあ、片付けとかんといけん。台所は、何もなかったように、きれいに片付けて、囲炉裏のそばにゴロンと横になって、「グー、グー、グーグー、グー、グー」大きないびきをかいて寝だした。しばらくしたら、「ブブー、ブー」大きなおならをこいて、「グー、グー、」寝とる。その間に男は、そぉーと、二階から降りて、外に出て、夕方がくるのを待っとったんじゃなあ。夕方で薄暗うなったもんじゃから「帰ったぞー」言って中に入ると、いつものように女房は、囲炉裏のそばで「あ~お腹が張って気持ちが悪い~、胸が張る、あ~体じゅうがだるい~」寝とる。「おまえ、またか。こうたびたび、えろうなったんじゃ困るなあ。そうじゃ、きょうはな、おまえの病気が治るまじないでもしょう。おまえ、これから隣に行ってなあ、鼓を借りて来い」「いや、えろうて動けません」「えろうても、おまえの病気のためじゃ、借りて来い」そい言われて女房は、隣に行って鼓を借りてきたんじゃなあ。そうしたら、男が「じゃあ、わしがなあ、太鼓をたたいて歌を歌うから、おまえは、その鼓を打って、そこで踊れ」言われたんじゃ。男は、太鼓をたたきながら「テコテコテンテン、テコテコテンテン、鯛を二枚にサトイモ、ゴボウ、お米を三升も食ったれば、腹も張るじゃろ、屁も出るじゃろう、テコテコテンテン、テコテコテンテン、鯛を二枚にサトイモ、ゴボウ、お米を三升も食ったれば、腹も張るじゃろ、屁も出るじゃろう、テコテコテンテン、テコテコテンテン」たたくと、女房は、「くやしや、くやしや、どこの木陰でのぞかれたらや、ポンポンポンポン、くやしや、くやしや、どこの木陰でのぞかれたらや、ポンポンポンポン」たたく。「テコテコテンテン、テコテコテンテン、鯛を二枚にサトイモ、ゴボウ、お米を三升も食ったれば、腹も張るじゃろ、屁も出るじゃろう。ブッブッ、ブッブッ、テコテコテンテン、テコテコテンテン」「くやしや、くやしや、どこの木陰でのぞかれたやら」そうしてるうちに、女房のお腹も、ちゃんとおりおうて、「あ~やっと、治りました。これからはなあ、もう決して、ひとり食いをしませんので、許してつかあさい」言うことで、女房もひとり食いせんようになったんじゃって。昔こっぷり。
| 最終更新日: | 2010年7月2日(金) 19:29 | 更新者: |
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