立石おじさん おかやまの昔話

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【第4話】 五分次郎

なんと昔があったそうな。
あるところに、おじいさんとおばあさんとおったそうな。そのおじいさんとおばあさんには、子どもがなかったもんじゃから、おじいさんとおばあさんは、どうか子どもを授けてもらおうと思うて願をかけて、村の荒神さまに21日間、おこもりをすることになったそうな。「どうぞ、子どもを授けてつかあさい。どうぞ、子どもを授けてつかあさい」21日間おこもりをして満願の日。おばあさんの中指がぷくーと膨れたそうな。「ありゃりゃ、こりゃあ、中指が膨れたぞ。これじゃ仕事にならんなあ。こりゃあ、つぶさんとしょうがない」と思うて、針を持ってきてつぶそうとしたんじゃ「危ない、
危ない」いう声がこの指から聞こえてくる。おばあさんは不思議に思うて、そっと針を当てたらその膨れたところが、パッチと割れて、中からコロロンと落ちて、小さな男の子が生まれたんじゃ。その男の子は、1センチ5ミリ、小さいもんじゃからおじいさんとおばあさんは、五分次郎という名前をつけたんじゃなあ。「五分次郎や、五分次郎や」可愛がって育てておったんじゃ。一年経ち、三年経ち、五年経っても、五分のまま。体がひとっつも大きゅうならんのじゃ。じゃけど、だんだん、だんだん、知恵がついてきた。そうこうするうちに、五分次郎は、「おじいさん、おばあさん、いつもわたしが、養のうてもらうばあじゃ申し訳ないけん。これからちょっと仕事をしょうと思うんじゃ」「なんの仕事をするんなら」「魚屋をしょうと思うんじゃけどな」「魚屋がおまえにできるもんか」「まあ、やってみます。少しお金を貸してつかあさい」おじいさんとあばあさんからお金を少し借りて、五分次郎は、魚を仕入れにいったんじゃ。いわしうぃ一匹背負うて、たておいにして、そうして帰ってきておった。途中に大金持ちの家があったんじゃなあ。そこに五分次郎は寄って、「ごめんください。いわしを買うてつかあさい。ごめんください。いわしはいらんかな」声をかけたところが、家の人が出てきた。ところが誰もおらん。「魚屋どこにおるんなら」「ここです。いわしを買うてつかあさい」「どこにおるんなら、見えんじゃないか」「下駄のところです」下駄のところを見たら、下駄のはの下のところに小さな子どもがおるんじゃ。いわしを一匹たて負いにしとる。「ありゃ、こりゃあ、珍しいの」家の人がみんな出てきて、「ありゃこりゃ、かわいらしい、かわいらしい、小人じゃあ。」喜んどったんじゃあ。「そりゃ、いわしを買うちゃろう」いわしを買うてもろうて、そこの旦那さんや奥さんや三人の娘が出てきて、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、手の上にのせて遊んどった。そのうちに夕方になってきた。「ありゃりゃあ、もう日が暮れそうな。これじゃ家に歩いて帰るわけにいかんから、ここに泊めてつかあさい」「いや、おまえぐらいの者は、いくらでも泊めてやるから、泊まれ泊まれ」「食べるものは、ちゃんと持ってきとりますから」腰から袋を出して、いりこをかいて食べたそうな。そうして、みんな寝た。夜中に、五分次郎は、そ~と、起きてきて、そこの家の娘の口のところに、いりこを塗っておいたんじゃなあ。次の朝、そこのお母さんが起きて台所に出ると、「あ~ん、あ~ん、あ~ん。」泣き声が聞こえる。見たら、五分次郎が泣いとる。「五分次郎や、どうしたんなら、泣いとるがな」「いえ、わたしの食べるいりこがのうなっとるのです。」「のうなっとる言うて、いりこなんか誰もたべりゃへんぞ」「でも、誰かがなめたんです」言われておかあさんが、調べてみたら、三人の娘たちの口のまわりに、いりこがついとったんじゃ。「悪かったなあ。うちの娘たちが食べたらしい。ほんならいりこをつくっちゃろ」お母さんがいりこを作ってくれた。「いや、このいりこは、粒が大きゅて、ノドにかかって食べれません」「ほんなら、こもう引いちゃろう」石うすで、もっと細もうして出したら「こりゃ、こますぎて、あごに引っ付いて食べれません」「どうすりゃあ、許してくれるんなら」「ここの娘さんを一人、お嫁さんにくださったら、許してあげます」言われたもんじゃから、しょうがない。「娘が食べたんじゃから、ほんなら、一人嫁にやろう」いうことで、一番上の娘に「五分次郎の嫁にいってくれんか。」言うたら「あんなちっぽけなもんのところに、嫁なんかいくもんか」上の娘は、ぱあーっと逃げてしもうたんじゃ。二番目に言うたら、「おえんさんが行かんのじゃったら、わたしもいきません」さーと逃げてしもうた。一番末っ子に「すまんけど、おまえいってくれんか」言うたら「しょうがありません。わたしがいきましょう」末っ子が五分次郎と一緒に、おじいさんとあばあさんのところに帰っていったんじゃ。おじいさんとおばあさんは、喜んで、「ええ、お嫁さんを連れてきた。おまえたちはな、結婚したんじゃから、記念に金比羅さまにでも参ってこい」いうことで、五分次郎とお嫁さんは、金比羅参りに行った」んじゃなあ。船に乗って、海を渡っていく。海を初めて見た五分次郎は、喜んで、船の上であばれておった。そうしたら、船のことから、ぴょこんと下に落ちてしもうた。そこに大きな鯛がやってきて、五分次郎をぱくっと飲んでしもうたんじゃな。「こりゃお 大弱りじゃあ。」お嫁さんはそう思うておった。もう帰ろうかなあ、と思うったけど、せっかくここまで来たんじゃから、金比羅さんだけでも参って帰ろう思うて、そうして、金比羅さんへ行って宿をとったんじゃ。夕ご飯時になったら、下で、旦那さんが大騒ぎをしとる。降りてみたら、「いやいや、鯛の刺身を作ってあげようと思うたら、おなかから、声が聞こえるんじゃ。」それを聞いたもんじゃから、お嫁さんが、「実はこうこう、こういうことなんで。そーとおなかを割いてみてください」言われたもんじゃから、旦那さんがそーとおなかを割いてみたら、そうしたら、腹の中から、ぴょろっと五分次郎が出てきて、そのお嫁さんは喜んで、「あやっと、私の主人が出てきた。」と喜んだんじゃなあ。そうして、二人で、次の日に金比羅様に参ってかえったんじゃ。道をまちごうたんか、夕方になっても、人の家のあるところに出ん。「こりゃ、困ったぞ。」どこか泊まるところはないかなと思ったら、向こうで、光が見えるもんじゃから、そこに行ってみたら、おばあさんがおった。「今晩一晩泊めていただけませんでしょうか」「いやいや、泊めてやりたいけど、ここは鬼の家じゃから、鬼が来ておまえらを喰うてしまうぞ」「かまわんから、泊めてください。」そういわれて、お嫁さんは、おしいいれの甕の中に入って蓋をしてもらう。五分次郎は、柱の節穴の中に隠れとったんじゃ。しばらくしたら、鬼たちがやって来て「ありゃ、ばばあ、今晩人を泊めとるな。人の匂いがする。それに、ひととめばながさいとるぞ」というて言うたんじゃなあ。それから探してみたけど、誰もおらん。「しょうがないわ、相撲でもとろうか」鬼たちが、相撲を取り始めた。そうしたら、「やちゃこい、やっちゃこい。赤尾にの勝ち」五分次郎が言うもんじゃから、鬼たちは、びっくりして、「今晩は、魔物がこの家に住んどるぞ、逃げ、逃げ」みんな逃げてしもうた。あわてて逃げたもんじゃから、打ち出の小槌を忘れて逃げたんじゃな。五分次郎は、お嫁さんに「この小槌で、わしを五尺三寸のええ男になれ、というて、たたいてつかあさい」「たたいたら、あんたがつぶれてしまう」「それでもええから、たたいてくれ。」いわれたもんじゃから、お嫁さんか、「五尺三寸のええ男になれ」目をつぶって、バーンとたたいたんじゃ。ゆっくり目をあけてみたら、立派な若い衆が立っておった。喜んでお嫁さんは、連れ立って帰って、ふたりで一生しあわせに暮らしたんじゃって、昔こっぷり。

最終更新日: 2010年5月28日(金) 20:26 更新者: