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立石おじさん おかやまの昔話

【第96話】 ヘヤの起こり

昔な、あるところに、お父さんとお母さんと息子の三人暮らしの家があったんじゃな。その息子も大きゅうなって年頃になった。お父さんとお母さんは、「もう家の子も、大きゅーなったから、ぼつぼつ嫁をもろうちゃらにゃいけんな」いうことで、あっちに探し、こっちに探し、嫁を探しておったところが、隣村にたいそうべっぴんの娘がおるいうことを聞いたもんじゃから、行ってみたところが、聞いたとおり、たいそうべんっぴんなんじゃ。聞き合わせをしてみりゃー、なかなかよー仕事もする、それに気立てもえー、「こりゃー、うちの息子にもろちゃらにゃーいけん」ということで、お願いをして、嫁にもろーたんじゃな。嫁に来たら、よー仕事をするし、気立てもえーし、それに綺麗なもんじゃから、息子も喜ぶ、お父さんお母さんも喜ぶして、しあわせに暮らしとったんじゃな。五日経ち、六日経ちするうちに、その嫁さんの顔がだんだん、だんだん、悪うなってきた。お母さんは心配してな「あんた、どっか調子が悪いとこでもあるんじゃねえの、顔色が悪りーぞ」「いや、別に何でもありません」「そうか、そねえならえんじゃけどな」次の日になっても、顔色が、悪るーなるだけで、よーならん。また、心配して、お母さんが「あんた、どうも顔色が悪いぞ、どっか調子が悪いことはないんか」「いや、そんなことはありません。別に何もかわったことはない」「いや、遠慮せずに、なんでもゆーてくれりゃーえんでー」「うん、わかってますけど、別に何でもありません」「そうか、そうか」それにしても、また次の日になったら、益々、顔色が悪い。「あんたな、うちの嫁になったんじゃから、なんにも遠慮することはないから、ちゃんとゆーてくれりゃーえーからな何にも遠慮はいらんからな」言うたら、「いや、お母さん、実は、わたしは、病気があるんです」「病気か、どねーな病気なら」「実は、わたしゃ、屁が出る」「屁が出るゆーて、屁は誰でも出るがな」「いや、実は、うちのお父さんとお母さんが嫁に来る前に、『決して、嫁に行ったら、屁を出したらいけんぞ』言われたもんじゃから屁を出さんでずっとがまんしとったら少し、体の調子が悪うなったんです」「そりゃあ、屁を出さなんだら、体の調子が悪るーならー、屁じゃゆーもんは、誰でも出すし、どこでも出るもんなんじゃ、遠慮することはないから、屁を出しゃーえーからな」「お母さん、本当ですか」「本当じゃ、今すぐすりゃーえーで」「お母さん、本当ですか」「そうじゃ、今そこですりゃあええ」「じゃあ、お母さん、遠慮せずにさしていただきます」言ったかと思ったら、嫁さんは、着物を裾をパッ広げたと思ったら「ブーン、ブブブブブッブー」と屁をこいたんじゃ。大きな屁でお母さんは、吹き飛ばされて、天井のあたりをあっちにふらふら、こっちにふわふわ、こっちにふらふら、「いや、助けてくれー、助けてくれー」嫁さんは、「ブーブブブブブブッブア~」屁が終わったとたんに、お母さんは、吹き上げられておったのが、下にドシッと落ちて、しこたま、腰をうってしもうて「いやー、きょうとい屁じゃ、人殺しの屁じゃ、おまえのような人殺しの屁をこくものは、家におってもろうたら困るから帰ってくれ!」そう言われて、嫁さんは、少しばっかし着物を持って、実家に帰って行ったんじゃな。ちょうど暑い日で、村境の峠を登って行った。汗が出るもんじゃから、汗をふきふき、登っていったら、頂上に生えてる大きな梨の木の下で、二人の商売人が休んどった。「いや、すみません、ちょっと木陰を一緒に貸してもらえます?」言ってその嫁さんがそばに座ったんじゃな。そうしたら、二人の商売人というのは、小間物屋と呉服屋じゃ。「いや、呉服屋さん、あの大きな梨の木のてっぺんにうまそうな梨がなっとりますな、のどが渇いていけん。あの梨を取ってくださったら、この小間物を全部あげてもえんですけどな」「いや、わしもじゃ、あの梨を取ってくれたら、ここにある呉服を全部やってもええ」それを聞いた帰っとった嫁が「小間物屋さん、呉服屋さん、そりゃ、本当ですか」「うん、本当じゃ、あの木のてっぺんの梨を取ってくれたら、そうしたら、呉服もやるし、小間物もやる」「それじゃったら、私が取らしていただきます」言ったかと思ったら、着物の裾をパッとはぐって、お尻を上に向けて「ブッ!」そうしたら、木の高いところになっとった梨がバタバタ、バタバタッと全部落ちてきた。それを小間物屋さんや呉服屋さんに差し上げたら「いや、これで生きがつげた、」喜んだ。そうして、小間物と呉服をいっぱいもろうたんじゃな。そこに、嫁さんの旦那が、はあ、はあ言いながらやって来た。「おまえ、どうしたことなら、わしが帰ってみりゃ、もう帰ってしもうておらん」「実は、こうこうして、大きな屁をこいたもんじゃから、お母さんの腰をしこたま打たせることになってしもうて、人殺し屁じゃ、いうことで、帰されたところです」「そりゃあ、どうしたんなら」「今、あそこの梨を採ったら小間物と呉服をやる言うたもんじゃから、いま、自分の屁で、梨を採って、差し上げたら、これをもらうことができた」「そうか、おまえの屁は、人殺し屁じゃない、こりゃ、宝屁じゃ。帰ろう、帰ろう」いうことで、婿さんと嫁さんは、それぞれ、小間物と呉服を背負うて、家に帰ってきたんじゃな。「お母さん、帰りました」出てみりゃ、嫁が帰っとる。「こりゃあ、おまえ、人殺し屁をこく者をようも、連れて帰ってきたな」「いやいや。お母さん、実はあ、こうこうこういうことなんじゃ。見てつかあさい。ここに、呉服と小間物をもろうてきました。これから内の嫁が屁がこきとうなったら別に間をつくって、そこでこかせるから、お母さん心配ない」「そうか、別に間を作って、そこでこくんじゃな」「そうしますから」「それじゃったらええ。これだけ呉服と小間物がありゃ、しばらくの間は働かんでも食えぞ」言うことで、お嫁さんが屁をこくための間を一つ作ったんじゃな。それで、その間のことをヘヤということになったんじゃ。ヘヤは、嫁さんが屁をこく部屋のことなんじゃって。それから、部屋ということが始まったんじゃって、昔こっぷり。

最終更新日: 2012年4月26日(木) 16:44 担当者: 中塚美佐子

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