去年の豪雨により決壊した倉敷市真備町の末政川の堤防近くのお堂には、平安時代から住民の心の拠り所となっていた毘沙門天立像と大日如来坐像がありました。
被災した2体の仏像は修復され、今月17日から岡山市の岡山県立博物館で展示されます。
被災した仏像の修復には、文化財レスキューに取り組む岡山史料ネットが仲介し、民間ファンドの助成金があてられました。その後、赤磐市の佛師・長谷川隆鳳さんがおよそ3か月修復作業にあたり、元の姿が蘇りました。
博物館には、有井地区の住民代表2人と宝生院の石原澄明住職が訪れました。毘沙門天立像と大日如来坐像は、およそ900年前から地域住民に守られてきたとみられています。
しかし、2体が収められていたお堂は、去年7月の豪雨で決壊した末政川の堤防のすぐそばでした。水没したお堂は大きく傾き、中の仏像もひっくり返って崩れ、悲惨な状況でした。
災害から2週間後に近くの宝生院の石原澄明住職が運び出し、県立博物館に持ち込むと、重大な史料が発見されました。
毘沙門天立像の胎内に明治13年の水害の記録が書かれた紙が入っていたのです。
博物館の統括学芸員の中田利枝子さんは、平安時代から、水害の度に修復が行われ、少しずつ形を変えながら残されてきたことを3人に説明しました。
修復された部分を見て、仏像と有井地区の歴史を聞いた住民は、仏像の修復にあたった長谷川さんと中田さんに感謝の言葉を伝えました。
【インタビュー】
・下有井地区町内会長諏訪智朗さん
・真備町有井諏訪愿一さん
有井地区では、今後、住民に2体の仏像の歴史を説明することや、新しく平成30年7月豪雨の記録を仏像の胎内に入れることも考えているということです。
【インタビュー】
・岡山県立博物館 中田利枝子 統括学芸員
2体の仏像は、岡山県立博物館で来月(8月)25日まで展示されています。♯