1. KCTコミちゃんTOP  >  
  2. 立石おじさん おかやまの昔話  >  
  3. 放送

立石おじさん おかやまの昔話

【第97話】 ほら吹き息子

昔な、あるところに大そうにほら吹きの男がおったそうな。村の衆は、「ほら吹き、ほら吹き」いうてみんな言うとった。あんまり、ほらを吹くもんじゃから、村の衆もな、「あいつは、ほらばー吹いて」だんだん、だんだん人気がのうなっておったんじゃな。ある日その男が、山から木をかたいで帰っとったら、村の人に、ばったり出会おうた。「ありゃりゃー、ほら吹きさん、きょうは、山で木こりかな」「あー、薪をこらんとないまらな、薪を取りに行ってきたんじゃ。やっと一担だけ作ってかたいで帰りょうるところじゃ」「ありゃ、たった一担かな」「いやいや、それがな、木をこっておったら、向こうから大きなシシが飛んで出てきた。大きいこと、大きいこと、こっというじほどもある大きなシシが、ダーッとやってきたもんじゃから、こりゃ危ないと思って、家にザーッと逃げた。逃げたかと思ったら、逃げた方に向けて、次のイノシシがダーッとやってくる。今度は、左に逃げたら、左の方に向けて、次のシシがダーッとやってくる。次から次にやってきて、もう仕事どころじゃない。命からがらで逃げて帰ってきたんじゃ」「そうか、次から次にようけいイノシシが出てきたんじゃな。せーで、何頭ほど出てきたんなら」「いや、そりゃー、シシの十六頭じゃ」「あ、そういうことか」そういうような、大話をして、ほらを吹いて、みんなからだんだんだんだん嫌われるようになった。相手にしてくれんようになったもんじゃから、そのほら吹き男は、「いやーこの村におったら、おもしろうない。どっか、ほら吹きの男と、ほら吹き比べがしたいもんじゃな」そう思うとったら、風の便りで、なんでも東の方に、2,3日歩いて行ったところに、ほら吹き屋という、たいそうなほら吹きがおる。という話を聞いたもんじゃから、さっそく、旅こしらえをして、そうして、わらじを持って、弁当を持って、東に向けて歩いて行ったんじゃな。3日目の昼前にその村についた。「ほら吹きは、どこですかな」言ったら、「あ、あそこですらー」いうことで、すぐに教えてくれたんで、その家を訪ねてみたら、表に、畳二畳式ほどもある大きな看板がかかっておって、『ほら吹き屋』と書いてあった。「いや、ここじゃ、ここじゃ」と思って、「ごめんくだされ」入っていったら、「おいでなさい」出てきたのは、十ほどの子どもじゃ。「ここは、ほら吹き屋さんですな」「へえ、ほら吹き屋です」「おとうさんは、お出でかな」「いやー、おとうは、3、4日前に出かけて行って、まだ帰っておりません」「いつ帰ってこられりゃあな」「もう2日や3日は、帰ってこんのんじゃねーかなと思います」「どこに、旅をされたんならー」「いやいや、こないだな、富士山がかりゃりそうになったということで、連絡があったもんじゃから、線香3本かたいで、そうして、富士山のところに行ったんじゃ」「線香を何にするんなら」「富士山がかえるから、そのつっかえ棒にするいうてな、線香かたいで行ったんじゃ」「そうか、おまえも、ほら吹きの息子だけのことはあるのー、それで、おかあさんは?」「おかあさんは、きのう出て行きました」「ほんなら、きょうにでも帰ってくるんか」「いやー、一週間は、帰ってこんと思います」「どこに行ったんなら」「いや、近江の琵琶湖の底にひびが入って、水が漏り出したいうことで、水の漏りを止めに、こぬか三合ほど持ってで出かけて行きました」「そうか、めかでひびを止めるか、おまえもたいしたもんじゃのー。そりゃーそうとな、4,5日前にこっちの方じゃ、大風が吹かなんだかー。実はな、わしは、西の方の、2、3日歩いて行った方の村のもんじゃが、大風が吹いて村にある大きな寺の釣鐘がブワーンというて飛ばされてしもうたんじゃ。たいした大風じゃったぞ。こっちの方に、ひょっとして、その釣鐘がきとりゃーへんかのー」「いや、そういやー、4,5日前のことじゃったかな、裏の軒下にはっとるクモの巣になんか黒いものがひっかかって、グワーン、グワーン、グワーン、グワーン、大きな音がしてうるそうてしょうがない。ありゃーなんかな、とって捨てちゃろー思うとったら、きのう、大風が吹いて、そのグワーン、グワーンいうとったものがグワーンと、こんどは、西の方に飛ばしていったんじゃな、ひょっとしたら、おたくの方に飛んでいっとりゃせんかな」言うたもんじゃから、ほら吹き男、「いやーこりゃーたいしたもんじゃ」と思うたけど、負けずに、「そりゃーそうとな、わしの友だちに、大きな男がおるんじゃ、どねえな男か、教えてやろうか」「うん、その大男の話じゃったら聞こうな」「いや、わしの友だちにな、大男がおって、富士山の頂上に腰をかけて、近江の琵琶湖で足を洗う。それーな大男がおるんじゃ。これほどの大男は、日本にゃーおらん思うけどな」「そうかな、わしの友だちにも、大きな男がおってな、なんでも聞いた話じゃ、富士山に腰をかけて、近江の琵琶湖で足を洗うその男を、手のひらでくるくるっとまるめて、口の中にグッと飲み込んだいう話を聞いたがな」ほら吹き男は、参ってしもうて、「そうか、そねーな大きな男がおったか。じゃけど、この男にゃかなうまい。天と地を一担にしてかたいで、目にもとまらん速さで、走っていく大きな男がこの村にあるんじゃ」「いや、そうかな、そりゃまー大きいな、じゃけどな、わしの友だちにゃーな、天と地を一担にたかぐその男をまゆげの先でポーンと飛ばしたというような男もおるんじゃ」ほら吹きは、参ってしもうて、「そりゃーそうと、おまえは歳は、なんぼーなら」「わしは、歳はわかりません」「おまえの年になって歳がわからんのか」「いや、親は、十じゃいうとりますけど、わたしゃ、生まれた時を知りませんから、おじさんは、生まれたときを知っとってかな」「そう言われりゃー、生まれた時は知らん。親が四十二じゃーいうから、わしも四十二じゃ思うとる。参った、参った」ほら吹き男は、尻尾を巻いて、帰っていったんじゃって。それから村に帰っても、あんまりほら話をっせんで、村の人から、可愛がられるようになったじゃって。昔こっぷりとびのくそ

最終更新日: 2012年4月26日(木) 16:47 担当者: 中塚美佐子

このページのトップ

JASRAC許諾番号:5770546002C21040