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立石おじさん おかやまの昔話

【第99話】 運定めの話

なんと昔、あるところに夫婦もんがおってな、ふたりの間に子どもができはじめたんじゃ。もう一日か二日で、子どもが生まれるという時になって、男がな、産後のひだちがようなるようにいうて、町に出かけて行って、ベニ花を買いにいったんじゃな。町まで行くのは遠い、朝早ように出て、町についてベニ花を買って、村の近くまで帰ってきたら、もうあたりは、真っ暗になってしもうた。もう道も見えん。「困ったなあ、こりゃあ、家に帰れんぞ」と思うとったら、ちょうどええぐあいに辻堂があったもんじゃから、「こりゃあ、ええ辻堂があった。こんばんは、この辻堂で、休ましてもらおう」男は、その辻堂に入って、横になって寝たんじゃな。夜中に話し声で目が覚めた。「観音さん、きょうは、お産があるでな、一緒に行きましょうや」「いや、荒神さん、きょうはな、お客があるもんじゃから、いけんがな。荒神さんひとりで行ってつかあさらんか」「そうかな、ほんなら行ってくらあな」そうして、荒神さんというひとが、出て行ったそうな。しばらくしたら、「漢音さん、帰ってきたでー」「どうじゃったかな」「いや、大きな男の子が生まれとった」「そりゃあ、よかったな、それで、寿命は」「寿命か、それがな、13の歳の師走の川に蛇体のとりいれじゃ」「そうか、13の歳の師走までしかもたんか。せーでもご苦労さんでした」そう言って荒神さんは帰っていったんじゃな。「こりゃあ、ひょっとしたら、うちの子を言っとんか」そう思うて、男は、心配しとった。次の朝早ように起きて家に帰ってみたら、話されとったように、元気のええ、男の子が生まれとる。生まれた時が、ちょうど、荒神さんが来た時分にぴったりじゃ。「ひょっとしたら、この子は、13の歳の師走までしかもたんなあ」思うとったけど、黙っておったんじゃな。それからまた、ニ、三年したら、次の子どもを身ごもった。もう一日か、二日で生まれることになったもんじゃから、また、男が、町までベニ花を買いに行ったんじゃな。やっぱし、村はずれまで帰ってきたら、日が暮れて、前の辻堂に泊まることになった。夜中にまた、話し声で目が覚めたんじゃ。「観音さん、子どもが生まれるでな、行こうじゃねえか」「いや、こんばんも、お客さんじゃ。すまんけど、行っとってくれんかな」しばらくしたら、「やあ、観音さん、帰ってきたでー」「荒神さん、どうじゃったかな」「いや、今度も大きな元気のええ、男の子じゃった」「そりゃあ、良かったなあ、せーで、寿命は、それがな七つの歳にアブのとりいれじゃ」「そうか、七つまでしか寿命がもたんか。それにしても、荒神さんご苦労さんじゃったな」そう言って荒神さんいうのは、帰っていったんじゃな。男は、「今度もうちの子の話じゃないかなあ」と思って、心配して、次の朝早ように家に帰ってきた。帰ってみたら、大きな元気のええ子どもじゃ。生まれた時刻も、辻堂で聞いた時刻じゃ。「こりゃあ、七つの歳までしか寿命がないぞ」そう思うておったじゃな。下の子が七つの歳になった。夏になって、おやじさんが田んぼの周りに垣をしに出かけて行ったんじゃな。そうしたら、その下の子が、「お父さんについていく。おとうちゃんについていく」言っていうことをきかん。「まあ、ついてこずに、家で遊びょうれ」「いや、ついていく、ついていく」無理やりについて来たんじゃな。田んぼのそばの垣をすーっとお父さんがしておったら、その周りその子が来て、遊んどった。ところが、ハチアブという蜂が、ブーンと飛んできて、その子どもの鼻の頭にパッと止まったかと思ったら、ブーンそのまま、子どもは倒れてしもうたんじゃ。「はあーやっぱり、寿命は七つまでじゃったか。アブのとりいれじゃ言うたけど、アブによって死んだか」そう思うとったんじゃな。それから、次に、今度は、上の子が13の歳になったんじゃな。明日から師走、「いや、この子も明日から、もうひと月しか寿命がない。ひと月のあいだに寿命がのうなる。かわいそうな」お母さんと話をして、餅をついて、師走の一日の朝、その息子と三人で雑煮を作って祝うたんじゃな。「いや、おまえは、餅が好きじゃからな、雑煮を食えよ」いうたところが、その子どもは喜んで雑煮をたくさん食べた。「あー、おまえはな、きょうは、正月じゃ、これで13から14になった。雑煮を食べたんじゃから」言うて、話をしとったんじゃな。そうしたところが、昼前になって、その男の子が、「おとうちゃん、おかあちゃん、これからな、友だちと約束しとるから、川に魚を釣りに行ってくるからな」「いやいや、今日はな、魚を釣りに行かずに家におれー」「いやいや、もう、友だちと約束しとんじゃ。」そう言うて、魚籠を持って、竿を硬いで、出ていった。約束の芭蕉に、子どもが行ってみると。向こう岸に友だちがおる。「おーい来たぞー」「ようー来たかーこっちへ渡ってこーい」言ったかと思ったら、向こうでボソボソ話をしょうる。「おえんぞ、こちゃあ、13じゃない、14になっとるぞ」「そんな事はなかろう」「いや、14じゃ」「そりゃあ、困ったな」言ったか思ったら、その友だちが、向こうに岸から川の中にドブーンと飛びこんだ。飛び込んで。水のところに頭を出してたかと思ったら、大きなヘビになって「わーっ」とそ男にかかってきた。男の子は、飛んで帰ってきたんじゃな。その話を聞いたお父さんは、「そうじゃったか。今朝雑煮を食うて、おまえは、14になって、これで寿命が伸びた」そういうて言ったんじゃってな。それで、その子は、長生きをして、一生、しわせに暮らしたんじゃって。そのことから、12月の一日、師走の一日には、膝塗りというて、膝の上に餅やぼた餅を置いて、師走川にこけんようにとう行事を行うようになったんじって、昔こっぷり。

最終更新日: 2012年5月14日(月) 19:49 担当者: 中塚美佐子

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