かつて、備中地方でも、6月から8月のお盆前までの暑い時期に夏のスタミナ料理としてドジョウと野菜、うどんを大鍋で煮る「ドジョウ汁」を農作業や寄り合いの後に食べていたそうです。農業用水からドジョウの姿が見られなくなった今では、珍しい料理となっています。今回、総社市新本の丸裕生さんに「ドジョウ汁」を再現していただきました。
総社市の西部新本の農家に生まれ育った丸山裕生さん82歳は、若い頃、農業用水に泳いでいるドジョウをすくっては、ドジョウ汁を作って近所の仲間たちと一緒に食べたそうです。ドジョウ汁の材料です。魚屋さんで買ったドジョウカボチャ、ナス、サツマイモ、ゴボウ、サトイモ、糸コンニャク、油あげ、ちくわ、タマネギなど調味料は、サラダ油酒、みりん、味噌です。それでは、ドジョウ汁を作っていただきます。まずは、塩でドジョウのぬめりを取ります。塩で揉んでぬめりをとったあとは、よく水洗いします。ドジョウの目方の半分ぐらいの量の油をよく熱して、そこへ、一気にドジョウを入れます。油で炒りあげるようにドジョウ全体に火を通します。ドジョウに火が通ったらタマネギ、カボチャ、サツマイモ、サトイモなどの野菜をたっぷり入れ、水を加えて煮ます。ドジョウのおいしいダシで野菜が煮えてきたら油あげを加え、最後にドジョウにように長く短冊切りしたナスを入れます。全体に火が通ったら、日本酒、みりん、味噌を加えて味を調えます。味噌は、白味噌、赤味噌両方を使います。特に、ドジョウは、産卵期の前の6月から7月が骨が柔らかくて一番美味しいそうです。ビタミンA、カルシウム、鉄分などを多く含むドジョウ汁は、夏バテ防止の郷土料理として親しまれてきました。ドジョウ汁は、うどん、そうめん、ひやむぎなど麺と一緒に食べるのがおいしい食べ方だそうです。大鍋で作って、おおぜいで食べるドジョウ汁。夏バテ防止効果だけでなく、地域の連帯感も一緒に味わえる郷土料理です。